乳腺に発生した結節性筋膜炎の1例

林直樹1),野畑真奈美1),山田義広1),中井美恵子1),中根昌洋1),
村上真理子1) ,伊藤誠2),越川卓3)
刈谷豊田総合病院 1)臨床検査・病理技術科,2)病理診断科
愛知県立大学 3)看護学部

症例

乳腺 40歳代 女性
左乳腺腫瘤を自覚して来院.マンモグラフィーでは左乳腺後隙L領域に局所的非対称性陰影を認めた.超音波では境界不明瞭で内部はやや不均一な低エコー域を呈した.画像診断上カテゴリー3と判定され穿針吸引細胞診が行われた. 

細胞診所見

泡沫状ないし油滴様物質を背景に,裸核紡錘形の細胞が多数孤在性にみとめられた.紡錘形細胞の一部には核の腫大した多形性に富む大型細胞や多核化した巨細胞も散見された.核形の不整やクロマチンの増量はなかったが,紡錘細胞優位の病変が示唆され良・悪性の判定に苦慮したため鑑別困難とした.

組織所見

乳腺周囲脂肪織内に境界不整な紡錘形細胞が密に増生する所見をみとめた.炎症性細胞の浸潤や少量の赤血球漏出も背景に見られた.一部の細胞には核の腫大や少数の核分裂像もみられたが核異型は軽度であった.免疫組織化学的には紡錘細胞はCD34陰性,α-smooth muscle actin陽性であり組織像と併せて結節性筋膜炎と診断した.


まとめ / 考察

乳腺の細胞診において多数の紡錘形細胞が採取された場合,葉状腫瘍や間質肉腫などとともに,稀ではあるが結節性筋膜炎を念頭に置く必要がある.

病院別