胸水細胞診にて、通常型と小細胞癌の2つの成分を同時に認めた前立腺癌の一例

名古屋第二赤十字病院 病理診断科
瀬古周子、長田裕之、水嶋祥栄、新田憲司、岩田英紘、前田永子、都築豊徳

症例

胸水 70歳代 男性
【既往歴】
強皮症肺、前立腺癌・多発骨転移にてFollow中、胸水貯留。

細胞診所見

小型で極めてN/C比の高い異型細胞から成る小集塊~大集塊形成を認めた。
腫瘍細胞の核形は円形~不整形で、核クロマチンは著明に増量し、木目込み状配列を示した。
その裸核状の異型細胞集塊とは別に、やや細胞質のある細胞集塊を認め、核小体の目立つ細胞から成る集塊を散見した。

組織所見

(胸水セルブロック)前者は核クロマチンの増した裸核状腫瘍細胞が小集塊を形成するのを認めた。
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CD56、TTF-1陽性、Synaptophysin弱陽性、chromograninA、PSA、PAP、PSMA陰性であった。
これらは小細胞癌を示唆する所見であった。
一方、後者は核クロマチンの増した腫大核を有する立方~円柱状腫瘍細胞が腺管や乳頭状構造を形成するのを認めた。
PSMA陽性、PSA、PAP一部陽性、TTF-1陰性を示した。
これらは通常型前立腺癌の転移を示唆する所見であった。
のちの精査にて肺に腫瘍は認めず、小細胞癌成分は通常型前立腺腺癌の脱分化と考えられた。

病院別